「…ねぇ、ひぃくんはさ、クリスマスどうするの?」


「え?どうする、って?」




あんまり好きではなかった、柊(ひいらぎ)という独特な名前。


だけど、ユキが呼ぶ “ひぃくん” は

なんだかとても優しく聴こえるから、好きだった。




ノートや参考書、過去問を、並べて広げた図書館で、遠慮がちに響いたその声が、


痺れるほど愛おしくて、
僕は、腕を止めて左をみた。




「…迷惑じゃなかったら、一緒に過ごしたいな、って。イブでも、クリスマスでも、どっちでもいいんだけど。

…中学校生活で、最後のクリスマスだから」




ユキは口にはしなかったけれど、


「最近2人であっても勉強ばっかりだし」


そんな寂しさが、伝わってくるようだった。





「そうだね、どこか行こうか」