オーワが駆けてたどり着いたのは大きな部屋だった。
上座には豪華な装飾が施された玉座。
壁には光をとおす色とりどりのステンドグラス。


「連れてきました、主様」

玉座に尊大に腰かける男にオヴァは跪いた。
その声からは敬意と憧憬が入り混じっている。
「・・・人間か・・・?」
主様、と言われた男は眉をひそめる。
わたしはというとその男の姿に呆気にとられていた。


漆黒の髪にわたしよりも濃い真紅の瞳。
それらを際立たせるのは血の気のない白い肌。

そして、何よりも目を引く背から生える3対の漆黒の翼。


「人間がなぜ・・・?」
「え、主様がお呼びになったのではないのですか?」
オヴァが驚いたように聞き返した。
「いや、・・・突然堕ちてきた。」
男は緩慢な動作で立ち上がり、歩き出した。
「そんなことがあるのですか?」
「少なくとも俺が王になってからはない。」
ゆっくりと近づいてくる美しい顔。
長く綺麗な指がわたしの顎を掴んだ。

「ようこそ、魔界へ。」