目を開けると、見知らぬ土地に横たわっていた。

空は黒い。
地も黒い。
周りに生える木々は枯れていないのに黒い。
わたしだけが、白い。


「いた!ちょっと、そこのお嬢さん!」

突然響いた威勢のよさげな少年の声にわたしは顔を上げた。
大きな白い狼に跨った麻色の髪に青い瞳の少年。
黒ではない色を持つ彼らに少し安心した。
「うわ、紅目だ・・・」
少年がポツリと呟いたのを聞いてわたしは舌打ちをしたい気分になった。

そうか、この地もこの白髪と紅目を蔑むのか。

「・・・あなたはだぁれ?」
視線を送ると少年は落ち着かなように動く狼を撫でた。
「俺はオヴァ。この城の守り人なんだ。」
「城?ここは森でしょ?」
驚いて聞き返すとオヴァと名乗った少年は笑いながら首を横に振った。


「我が主の城さ。ここはその庭。」


オヴァがすっと指さした先を見るとかすかに城と思える煉瓦の壁と大きな時計が見えた。
「主・・・?」
こんな広大な土地を持つ人はいったい何者なのか。