歩いて歩いて、俺はようやく王都にたどり着いた。
ここに来るまでには、今の魔族の戦争の最前線がじりじり下がってきているとかどこそこの村が魔族に襲われたとか暗い情報ばかりだった。


姉ちゃんと婆ちゃん、大丈夫かな・・・。

一番最近襲われた村は、姉ちゃんたちがいる村からは遠かったけどそれでもじりじり近づいていることは事実だ。早く王都に行って稼がないと。


「にしても、やっぱり王都に近づけば違うなぁ。」


王都に近づくにつれ治安や生活環境もどんどん改善されていくのがわかる。  貧富の差が見せつけられるような感じだ。戦争中だからある程度は質素なんだろうが、それでも俺がいた村からは考えられないくらいここら辺のやつらは裕福だ。ここら辺やつらから見た俺の恰好は、さしずめ浮浪者というところか。立ち寄る村々、どいつもこいつもきったねぇもん見るような目でみて邪険にしやがって。
食べ物は自分で調達できるからいいとして、屋根と壁があるところで寝たい。
ここのところ野宿野宿だ。体がだるい。夜中に動物や山賊盗賊に襲われることも多いから休まった気がしない。


ま、あと二週間くらだろ。
王都に行っても仕事にありつけない可能性はあるが、なんとかする。


決意を胸に、王都への道を黙々と歩いていると後ろから馬車の音が聞こえた。
旅を始めたばかりのころ、商人を装った賊に襲われたことがある。も今回ももしかしたらそれかもしれない。
警戒しながら道の端によって、道すがら作った石のナイフに手を添える。幸いとすぐ隣はうっそうとしげる茂みがある。
いざとなったら、即逃げる。うん、我ながらいい作戦だ。


そうこう考えている間に馬車が近づいて、少し追い越したあたりで止まった。


「おおい、そこの旅の方」
「・・・何か?」
「良かったら乗って行かれるかね?わしは王都まで行くんだが」
「じいちゃん!!また知らない人にか声かけて!!この前お金くすねられそうになったのにまだ懲りないの!?」

御者台からひょっこり後ろを覗き込むように顔を出したのは、人のよさそうな白髪の爺ちゃんと真っ赤な髪を短く切り込んでいる、若い女だった。

「ええ~いいじゃないか。旅は道連れじゃょう」
「今の世に情けなんかかけたらこっちが食い物にされるってなんかい言ったらわかるの!」
「だからお前がいるんじゃよ。期待しとるよ。ふぉふぉふぉ」
「っだ―――――!この平和ボケじじぃ!!!!!」
「あの、俺はこれで。」

いつまでこれに付き合わされるんだよ。俺は一刻も早く王都に行かなきゃなんないのに。
「ほら、お前がぐずるから旅の方が呆れておられるじゃないか。」
「私!?私のせいなの!?」
「俺を巻き込むなよ。」




こっちに同意を求めるな。



























結局、行先も同じということで馬車に乗せてもらうことになった。
爺ちゃんと赤髪は例のごとく商人をしているそうで、各地を回っているそうだ。女と爺ちゃんなんて賊の餌食になってしまいそうだが、この赤髪、ほっそりした外見に似合わず自分の身長・身幅ほどある剣を振り回す大剣使いで、ここらじゃ負けなしらしい。