間もなく救急車が来て、乗り込む彼を見送る。




座った彼が、振り返って私を見た。





「お客様も来て下さい。怪我してないか、調べた方がいいです。」




「いえ、私は大丈夫ですから。」




何度か断ったけど、救急隊の人にも促され、結局乗り込んだ。







「指、動く?」




だらんと下げられた左手が気になった。




あの出血の量からして、傷は深いかもしれない。




もし神経を傷つけてたら、指の動きに支障が出るかも…





「今は… 無理かも。」




彼の額に汗が滲む。