季節は春。

中学二年生になった私、堀口 杏奈(ほりぐち あんな)は、新学期が始まるのを心待ちにしていた。

クラス替え。それは、私たちにとってはビッグイベントなわけで。

それはもう夜も眠れないくらい楽しみにしていた。

「杏奈ー!うちら同じクラスだよ!」

幼なじみの坂口 ゆい(さかぐち ゆい)がキラキラした笑顔で言ってきた。

「…D組かー。他に仲良い人誰がいる?」

私がゆいに聞くとゆいは即答した。

「安井 竜(やすい りゅう)!」

「仲良い人を聞いたんだけど…。」

安井 竜とは、学年で1番モテるいわゆるイケメン君のこと。
私にはいまいち良さはわからないが、私の周りの女子たちは休み時間のたびに安井の話をしてはキャーキャー騒いでいる。

確かにかっこいいとは思うけど、遠い存在としか思えない。憧れているだけの方が私には合っている。

…と思っていた。