彼岸の杜




うーん、にしてもここまで着物やら浴衣やら似合う人初めて見たな。


あたしの家族も和服は普通の家よりは馴染み深いものだけどそれは家が神社だからだし。


じーっとこれまた不躾なまでにイケメンさんを見ていたら彼は「ちょっと待ってて、」と慌てたように襖の向こうに消えた。


……てか、今の人誰だったんだろう。


見たことない人だったなぁと考えていると、さっきのイケメンさんがまた顔を出して、その後ろから女の人が出てきた。



「よかった。目が覚めたのね」



ホッとしたように表情を和らげてあたしのそばに座る女の人もすごく綺麗な人だった。


黒い艶やかな髪に白い肌もさることながら、彼女の美しさをより一層引き立たせているのはその瞳。



「体調はどうかしら?痛いところとかはない?」



気遣いを感じる優しい声を聞きながら、あたしはその瞳に魅入っていた。


キラキラと宝石みたいに輝く彼女の瞳は、燃えるような緋色。