嘘だぁ!!と叫べば「そういう意味じゃないわよこのバカ!」と思いっきり叩かれた。めっちゃいい音したんですが。脳味噌すごく揺れたんだけど。グラングランなんですけど。


ただでさえあたしのおバカな頭がこれ以上のおバカになったらどうしてくれるんだ。責任とってあたしの代わりに補習受けてくれ。


痛みに悶絶して涙目になりながら顔を上げると紗季は柔らかく微笑んでいた。それにまたしてもびっくりしてしまう。



「あんたに何があったのかなんて知らないけど、今の朱里、あたしが見た中で1番いい顔してるわ」



クスリと小さいながらも優しく笑みをこぼす紗季のなんとレアなことか。え、まじでこれ紗季さん?だとしたら明日の朝にでも槍とか振ってくるんじゃない?


とは例え口が裂けようが世界が滅びようが言えないけど、雰囲気からなんとなく察したらしい紗季はあたしを睨みつけてきた。エスパーか。ほんでもって殺人ビームか。



「あんたのこと振った男たちに、逃した魚はでかかったってことを教えてやんなさい」


「ふふっ、そうする!」



とん、と1歩踏み出すと同時に胸元にかかっていたネックレスが揺れた。それをそっと手のひらに包み込む。


あたしの手のひらに収まった緋色の石。茜の心を映す綺麗な想い。じーさまにお許しをもらったあとに肌身離さずつけていられるようにと紛失防止のためにネックレスにした。


今は無理かもしれないけど、いつかあたしも茜みたいに強くて優しい人になりたいな。まんまっていうのは難しいからあたしらしく。


誰に対しても自分の憎しみや恨みをぶつけず許し、悲しみを抱きながらも他人を慈しみ、どんな人にも愛情を持って接することのできる人になりたい。



「それができるように見守っててね、茜」



あたしの言葉に応えるように、石はキラリと緋色に輝いた。




fin