彼岸の杜




なんとなく口を閉ざしてしまうあたしを見てじーさまはゆっくりと口を開いた。



「蔵に入って少しは頭が冷えたか」


「……うん」



素直にこくりと頷くと「そうか」とそれだけ言ってじーさまはあたしに背を向けた。



「なら、朝言ったことをじっくり自分で考えなさい」



そう言い残してそのまま行ってしまったのでこのまま突っ立ているのもなんだとあたしもすぐにお風呂場へと足を進める。


じーさまに朝言われたこと。こっちの時間で言ったら今日のことなんだけどあたしにしてみたらちょっと前のことだ。


一昨日の夜ごはんですら忘れてしまうようなあたしの残念な頭でも不思議とじーさまの言っていた一言一句が頭の中に浮かんできた。


『恋愛がいかんと言うわけじゃない。ただ朱里のそれはただの『恋愛ごっこ』じゃ。人を羨み、周りに流されるまま似合わない格好をして自分を貶めるな。他人に何かを求める前に、まず自分磨きをせえ』


ジャー、と流していたシャワーを止めて前を見る。湯気で曇った鏡を手で拭うと中には金茶色に染めた巻き髪を垂らしたあたしの姿が映っていた。


流されるまま…似合わない格好……そして他人に何かを求める前に必要なのは、あたし自身を磨くこと……



「よし!!」