自分でも思う。今世紀最大に間抜けな声が出たと。顔まで見られなかったのは不幸中の幸いってやつだ。声に劣らず間抜けな顔をしているに違いないので。


てかお母さま今なんておっしゃいました?あたしのお耳には朝こもってから云々って聞こえたんですけど?……まじか。え、まじか?!じゃあこっちじゃ1日も経ってなかったってこと!?これが驚かずにいられるか?!


リアル逆浦島太郎状態に返事をする余裕もなくあんぐりと呆けたまま座りこんでいると「もうすぐごはんできるんだからさっさと出てきなさいよ~」というお言葉を残してお母さんは行ってしまった。



「…………」



……ま、まぁ怒られなくてすんだんだから良しとしようじゃないか!考えても仕方ないよね、うん!


前向きな(?)考えで立ち上がってお尻や足についた埃を払う。うん、これ先にお風呂に入ったほうがいいかもしれない。全体は見れないけどそれなりに汚れてるしこのまま家に入ったんじゃ怒られそうだ。(主にじーさまに)


うーん、蔵なんか滅多なことがない限り入ることなんてないもんね。小さい頃はよく入り浸っていたけど。せっかくだし今度掃除でもしてあげよう。


内側の鍵を外して外に出ると柔らかな光があたしの体を照らした。風は少し冷たいけど浴びる夕日はあったかい。こういうところは時代にかかわらず変わらないんだなぁ。


まだ手に持っていた石を光に翳すとキラキラと綺麗に輝いた。



「茜……」



まだ茜のくれた優しさや強さ、慈しみの心や最後に浮かべていた儚くも凛とした笑顔が鮮やかに脳裏に浮かぶ。