ピクリと清二さんの肩が揺れる。あたしでもわかる清二さんの纏う不穏な雰囲気。前の時もそうだったけど、おばさんはあの年齢で学習しないんだろうか。
誰だって自分の大切な人が目の前で蔑まれたら怒りも湧く。あのときはあたしの存在が露見したら茜に迷惑がかかるから我慢した。でも、今はもうその茜はここにいない。
茜はこの村や清二さんのために今あの暗い森の奥で1人でいるんだよ。誰も来ない、食べ物だってない飲み物だってない、待ち受けるのは終わりだけ。それを知ってて自分の意思で行ったんだよ。
ぷつん、とあたしの中の何かが切れる音がした。
「茜のことそんな風に言わないで!!何も知らないくせにっ!!」
清二さんが言うより前に叫べば驚いたようにここにいる人の目が向く。たじろいだりなんかしない。それよりもずっとふつふつとした怒りが頭を支配する。
「あんたたちは茜が自分と違うってだけで茜を拒否して酷いことして、茜自身を見ずに否定して!何も知らないくせに!何も知ろうとしなかったくせに!」
茜がどれだけ優しい人なのか。あたたかい心を持っているのか。幸せそうな笑顔を浮かべるのか。
清二さんと一緒にいるときにどれだけ愛おしいという表情をするのか。村のことが大切でその話をするときにどれだけ穏やかな声で話すのか、そこにいる人たちのことをどれだけ考えていたのか。
「あたしの大切な人を馬鹿にしないで!そんな言葉でっ、茜のことを悪く言わないでよ!!」


