悔しくて悲しくて腹立たしくて、あたしが泣くなんてお門違いだとは思うのに流れる涙は止まらなくて唇を噛み締めて嗚咽をこらえた。



「朱里…」


「あかね、は、なんとも思わないの?!」



感情が溢れて自分でも制御できなくて思わず怒鳴るような声になってしまったけど、謝ろうとは思わなかった。あたし最悪すぎる。


でも茜がそんなに穏やかなのがいけないんだ。自分の命が晒されているのにどうしてそんなに…わかってる。あたしの八つ当たりで、あたしが勝手に怒ってるだけ。


でも、それでも、理不尽だって言われてもいいから、茜に何かしらの感情を吐かせたかった。こんな現実を受け入れてほしくなんてなかった。



「おねがい、茜……」



あたしの我が儘だってわかってるけど、それでもお願いだから。



「いかないで…っ」



行かないで。生贄になんてならないで。自分の命を投げ出すことなんてしないで。お願いだから逝かないで。


茜の着物にすがりついてすすり泣くあたしの声が静かな空間にこだまする。



「ありがとう、朱里。私のことを考えてくれて。私のことを思ってくれて。怒って泣いて、悔しがってくれてありがとう」



優しい声に顔を上げると、どこか泣きそうに表情を緩めた茜がいた。



「私はそれだけでいいの。それだけで幸せだから」


「あか、ね、」


「ねぇ、朱里」



ーーー私の、昔話を聞いてくれる?