こんこん、
重っ苦しい空気の相談室に、ノックの音が響く。
入り口に近いアタシが自然に出ることになり、扉を「はーい」と呑気な返事をしながら開ける。
「あの、ここが『相談部』ですか?」
視線が交わると、アタシよりも少し小さめ、綺麗な黒髪が印象的な少女が立っていた。
「…『ボランティア部』です」
振り返らなくても分かるくらいあからさまに、不機嫌な声で奥にいるセンパイが代わりに返事をした。
(この子タイミング悪いな…)
そんなことを思いながら、アタシは苦笑い。すると少女は、はっとした顔をして勢いよく頭を下げた。
「す、すみませんっ…てっきり勘違いしてました。ここに貼り紙があったから」
そういって、少女はドアに貼られた貼り紙を指さす。なるほどね、勘違いするのも無理ない。
「えっと、これは『ボランティア部』の活動の一環としてやってるの。だから、キミが捜してる『相談部』はある意味ここで合ってるよ」
アタシはそう言うと、廊下に出て貼り紙に小さく下の隅に書かれた『ボランティア部』の名前を指さす。
「そうだったんですね…!」
少女はアタシの説明を聞いてホッとしたように、安堵の表情を浮かべる。それにしても綺麗な人だ、アタシはその少女に暫し見とれてしまっていた。
「…あの、私の顔に何かついてます?」
(ま、まずい…!)
アタシは慌てて、首をぶんぶんと横に振った。
「や、違うんです…!」
言い訳は思いつかず、えーっとと数回繰り返していると少女はくすりと笑った。
「付いてないのなら良かった。あなた、可愛らしい方ですね」
優美なその口調、そして整った顔立ち。アタシはどこかでこの人を見たことがある。どこでだっけ――
「私は、3年生の宮木董子(みやぎすみれこ)と申します。生徒会執行部の副会長をしてます
――今日は、お願いがあって参りました」

