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永倉が入門して一ヶ月が過ぎた頃━━━━。













「きゃぁぁぁぁあぁぁあぁぁあ!!!」




まだ朝日も昇りきっていない早朝に雪の叫び声が響いた。



ドタドタドタドタドタドタッッッッッ!!!



悲鳴を聞きつけ走って来たのは周助、勝太、沖田、山南、藤堂、永倉、井上。




全員「何事だっっっっっ!!!!!」




ある者は竹刀を、ある者は刀を、そしてまたある者はほうきを持って飛び出して来た。



「も、門の前に…裸の…男の人が…っ……!」



何だなんだと門の前に視線を移せば雪の言う通り、上裸の男が倒れていた。




藤堂「酔っ払いか?」




勝太「そのようだな」




周助「勝太と源さんは彼を家まで運びなさい」



勝・井「分かりました」




男の腹には横一文字に大きな傷があった。



「雪、大丈夫?」


「うん。もう大丈夫」


心配そうに顔を覗き込んで来る宗次郎にそうは言ったもののまだドクドクと心音は脈打っていた。


きっと男のお腹の傷は切腹傷だ。



切腹は封建時代の道徳観念のもと、不始末が生じた場合にその責任をみずから判断し、自分自身で処置する覚悟を示すことで名誉を保つ社会的意味があり、「自決」また「自裁」とも称されている。



切腹させることは「切腹を許す」と表現され、対象者を武士待遇に扱う、一種の名誉刑であった。