「俺は……」



私達を避け続け、自分の事を一切語らない斎藤が雪等に連られて重い口を割った。



「俺は武蔵国で産まれた。父は明石藩の足軽で、産まれてからずっと平和に生きていた。だが数ヶ月前…旗本と口論になった末にそいつを斬ってしまったんだ。その後は父の計らいで京に身を隠していたが10日前にそこを出て江戸に来た。ここではスリをして生計を立てていたが…やはりうまくいかないものだな」



相変わらず表情は崩れないが、初めて斎藤が自分の事を話してくれた。




それだけで、出会って1日だと言うのに絆ができたような気がした。




「そっかぁ、大変だったね。でももう安心してね。私達と来れば食べる物には困らないし、追われることもない」




そう言うと雪は試衛館に向かって歩き出し




「俺はまだ世話になるとは言ってない」




斎藤の声は届いているはずだが振り向くことなく進んでいく雪。




それを見ていた宗次郎と平助も立ち上がった。