(短編✴︎)くらことゆうき



目が覚めた。



朝だ。



優希は寝ていた。
優希のお母さんが優希を起こしに来た。
「優希!起きなさい。」
お母さんが言った。
「僕…今日、熱あるんだ。」
優希は体温計を取り出して、お母さんに見せた。
「…ちょっと疲れただけだよ。すぐ寝れば良くなるよ。」
お母さんに言う。
「そうなの。ならゆっくり寝てなさい。お母さん、仕事だから。」

私は見ていた。
優希が体温計を布でこすって温度を上げていた。
優希は熱なんか無かった。

優希のお母さんがこちらに来た。

「もう、このクラゲも海に返しなさい。クラゲものびのびと海にいるのが一番でしょう?」
「…うん。」
優希とお母さんはそんな会話をして出ていった。

海に返す…?
そんな、そんな!!
優希は、優しい優希は。
そんなことしないよね?

お母さんが仕事に行くと優希はすぐに立ち上がった。


「…聞いてたかい?くらこ。僕はくらこを海に返さないといけないみたいだ。」

いつもの優しい笑顔になった。


優希。


何を言ってるの。

私は海になんか帰りたく無いの。

わかんないの?!!

何度も何度もガラスに体当たりする。

優希!!!!!

叫んだ叫んでも届かない。

「…くらこ、くらこはいいな。広い海で自由に生きられるんだよ。僕みたいに狭い、学校という社会で生きなくていいんだ。」

そう言うと優希は「じゃあ、お別れは明後日にしようかな。」と言ってまた立ち上がった。


「コンビニ行ってくる。」
そう言って彼は部屋を出ていった。