(短編✴︎)くらことゆうき


優希はそのノートを手に持った。
一つずつ、一つずつ、それを壁に投げた。
バンッ、バンッ。

何度も投げられるノートは壁にぶつかって、だらしなく床に落ちる。


シネ。
キエロ。
キモイ。


沢山の言葉が床に落ちていった。


優希…?

優希の目を見ると、優希の目が変だった。

今の、優希の目には何も映っていない。
きっと…。

優希は虚ろな目をして、ただ、ノートを投げていた。

優希!!!

その時だった。



「クソっ!!!!!!!」



優希が叫んだ。
優希…。

何もできない。

私は何もできない。
私は…。

優希は立ち上がって、着替えを持って出ていった。
きっとお風呂に入るんだろう。

優希の虚ろな目が私の頭から離れない。
優希の苦しそうな背中が頭から離れない。
優希のノート。
優希のカバン。