(短編✴︎)くらことゆうき







僕は、彼女がいた場所をじっと見ていた。



くらこ。



あの女の子はくらこだった。


石鹸の匂いがした。

あの匂いは…。



『優希。』




僕を何度も呼んだくらこの声が蘇った。



呼び慣れている僕の名前。



きっと、くらこは僕のことをいつも呼んでいたんだろう。



そう思うと、また涙が出た。





何度も呼んだ君の名前。



もう呼べない君の名前。



波が、くらこをさらった後、僕の足元になにか落ちていた。



水色のリボン。



くらこが頭につけていた。




『ミズクラゲ』のような綺麗な色。




僕はそれを拾った。




顔を上げると、夕日が僕を照らしていた。



くらこと僕の別れに同情してるかのように。