(短編✴︎)くらことゆうき




「…優希…!!」



私は彼の背中に向かって叫んだ。



「…誰…?」


届いた…!
私の声が届いた…!!
いつも届かない声。
絶対届かない声。
人間になった私の声は鈴のような音だった。

「くらこ!生物と数学…どっちの勉強からしようか?どっちがいい?」
『生物かなあ…。』
「……。くらこが答えてくれるはずないか…。うーん…。数学からしよう!」


あ、また思い出が…。
でもあの時のように届かない私の声が届いたんだ。


「…あっあのっ。」


私は優希に近づいて行った。


「…あなたは…?」

優希が立ち上がった。

私は優希の正面に立った。


「優希…。元気だして…。元気だして、いつもの優希に戻って。優希は優しい人だから。優希はいい人。いい人だから、自分を信じて…!」

優希は驚いて私を見つめた。


「優希…!」


私は思わず優希に抱きついた。


「えっ…!えっと…。」


優希は困った様子で声を上げた。

はじめて触れた優希の肌。

私は彼が困っているのは気にせずに抱きついていた。


涙が溢れて来た。


グスッ。

私の涙の音が海岸に響いた。

「…大丈夫…?」


彼はそういって私の顔を見た。


私は泣きながら彼から離れる。


「大丈夫って聞くのは私の方よ。」











「優希…私は優希が好き。」