「ただいま…。」
帰って来た。
優希が帰って来た。
優希の動きが一瞬止まった。
「何…これ。」
優希の目線の先にはわたしが磨いたカバン。
少し、落書きの後が残ってしまったけど。
丁寧にベッドの上に置いておいた。
優希はカバンを持ちあげた。
「すごい…。」
優希はそう言った。
「…部屋に石鹸の匂いがする。なんだこれ。まるで誰か居たような。」
優希はそう言ってカバンをまたベッドに置いた。
「…まさか、くらこ?」
えっ。
そんないきなりバレるなんて。
「…な、わけないか。きっとお母さんが仕事の昼休みに戻って来たんだな。」
そう言って笑顔になった。
笑ってくれた。笑ってくれた…!
優希。
大好きな優希が笑ってくれた。

