(短編✴︎)くらことゆうき



「ただいま…。」

帰って来た。
優希が帰って来た。

優希の動きが一瞬止まった。

「何…これ。」

優希の目線の先にはわたしが磨いたカバン。
少し、落書きの後が残ってしまったけど。

丁寧にベッドの上に置いておいた。

優希はカバンを持ちあげた。


「すごい…。」

優希はそう言った。

「…部屋に石鹸の匂いがする。なんだこれ。まるで誰か居たような。」

優希はそう言ってカバンをまたベッドに置いた。

「…まさか、くらこ?」

えっ。
そんないきなりバレるなんて。

「…な、わけないか。きっとお母さんが仕事の昼休みに戻って来たんだな。」

そう言って笑顔になった。

笑ってくれた。笑ってくれた…!
優希。
大好きな優希が笑ってくれた。