見て見ぬ振り。 俺は書類に目を通しながら 翼を見ていた。 俺が仕事してると思って ハンガーに上着をかけ、 コーヒーを持ってきた。 こんなキャストは初めてだ。 だから聞いてみた 『なぜコーヒーを?』 翼は今にも消えそうな瞳で俺を見た。 けど、言葉には強さがあった。 なんだか、放っておけなかった。 俺がフッと笑うと 翼もニコッと笑い返してくる。 だからか……客が翼を指名したがるな。