2学期の中間試験が終わった日
高校のテニス部に在籍していた香奈はその日も練習に参加していた。
ストレートの黒髪に涼やかな切れ長の目をした香奈は男子生徒からも人気があった。他校の生徒からも告白されることもあったが
そんなこと、香奈には興味がなかった。
それより
夏の合宿も終わって、秋の大会には絶対、出場する選手に選ばれたかった。
来年3年生となり受験生となる香奈にとって、
この秋の大会と次の春の大会の2回で、部活動は引退となる。
中学生から始めたテニス。
当時のテニス部は全国大会の常連出場校で
一度も代表選手に選ばれないまま3年間が終わってしまった。
県で一番の進学高校に進んでからは強豪校にいたときより
出場できるチャンスはあるように思えたが、
あと少しのところでライバルたちに
先を越されてしまっていた。
その日は軽い練習後に部員同士の練習試合があり、
その成績によって出場できる選手が選ばれる。
香奈は朝から緊張していた。
「勝ちたい。勝って選手に選ばれたい。」
練習試合の相手は同級生の杏里。
香奈が1年生のときから「アンちゃん」と呼んでいる親友だった。
実力としては5分5分。
でも杏里は春の大会で一度、選手に選ばれている。
だから、今回は自分が選手に選ばれたかった。
テニス部の顧問とコーチが見守るなか試合は始まった。
しかし、試合開始早々に香奈は転倒してしまい、
そのまま救急車で病院に運ばれてしまった。
「頭を打って意識をなくしていたから、大げさに救急車が来ちゃった。」
病院で意識をとりもどした香奈は最初、冗談ぽくそう言っていた。
むしろ足首を強くひねってしまったため、捻挫による痛みと
選手に選ばれるという希望がなくなってしまったことのほうが悲しかった。
ところが、
しばらくして少し視界がぼやけるような感じがすると思っているうちに
再び病院を訪れたときには、香奈の目は光を感じるのみで、
ほとんど見えなくなってしまっていた。
香奈が母親と訪れた病院の医師の話では
手術によって、
元の視力には戻らないまでも、目は見えるようになるとのことだった。
そのため、香奈は実家から少し離れた東京郊外にあるこの病院に
昨日から入院していた。
高校のテニス部に在籍していた香奈はその日も練習に参加していた。
ストレートの黒髪に涼やかな切れ長の目をした香奈は男子生徒からも人気があった。他校の生徒からも告白されることもあったが
そんなこと、香奈には興味がなかった。
それより
夏の合宿も終わって、秋の大会には絶対、出場する選手に選ばれたかった。
来年3年生となり受験生となる香奈にとって、
この秋の大会と次の春の大会の2回で、部活動は引退となる。
中学生から始めたテニス。
当時のテニス部は全国大会の常連出場校で
一度も代表選手に選ばれないまま3年間が終わってしまった。
県で一番の進学高校に進んでからは強豪校にいたときより
出場できるチャンスはあるように思えたが、
あと少しのところでライバルたちに
先を越されてしまっていた。
その日は軽い練習後に部員同士の練習試合があり、
その成績によって出場できる選手が選ばれる。
香奈は朝から緊張していた。
「勝ちたい。勝って選手に選ばれたい。」
練習試合の相手は同級生の杏里。
香奈が1年生のときから「アンちゃん」と呼んでいる親友だった。
実力としては5分5分。
でも杏里は春の大会で一度、選手に選ばれている。
だから、今回は自分が選手に選ばれたかった。
テニス部の顧問とコーチが見守るなか試合は始まった。
しかし、試合開始早々に香奈は転倒してしまい、
そのまま救急車で病院に運ばれてしまった。
「頭を打って意識をなくしていたから、大げさに救急車が来ちゃった。」
病院で意識をとりもどした香奈は最初、冗談ぽくそう言っていた。
むしろ足首を強くひねってしまったため、捻挫による痛みと
選手に選ばれるという希望がなくなってしまったことのほうが悲しかった。
ところが、
しばらくして少し視界がぼやけるような感じがすると思っているうちに
再び病院を訪れたときには、香奈の目は光を感じるのみで、
ほとんど見えなくなってしまっていた。
香奈が母親と訪れた病院の医師の話では
手術によって、
元の視力には戻らないまでも、目は見えるようになるとのことだった。
そのため、香奈は実家から少し離れた東京郊外にあるこの病院に
昨日から入院していた。


