そんなサッカーの練習をいつも見に来ている親子がいた。

寒いグラウンドの端っこにあるベンチで
コーチの坂崎から少し離れた所に座って、
同い年の子供達がサッカーをしてるのを見てる親子に
人見知りする坂崎はなかなか話しかけることもできず

その男の子が「白血病」だということも
サッカーチームにいる他の子供の親から聞いた。



この寒いなか、いつもサッカーの練習を見にくるくらいだから、
よっぽどサッカー好きなんだろうけど、
その男の子はどちらかというと無表情な子だったと記憶している。

でも…


坂崎はよくボール追っかけてる子供達に指示するとき
指笛を吹いていたが、

ふと坂崎がベンチの方を振り返ると
その男の子と目が合った。


「何?……ああ…指笛かぁ」

坂崎が、そう声をかけると
その子がうなづいた。

「指笛がどうしたんだい?」

「………」

「教えてやるよ
いいか…指をこうやって口にくわえて…」

フーフーフー
(`ε´)


なかなか音は出ない。

「もうちょい口閉じて、真ん中からだけ息出すんだ」


それからは

寒いサッカーグラウンドのベンチで
小さな体に
服をたくさん着込んで丸くなって

坂崎から少し離れた隣でサッカー見ながら

フーフー
(`ε´)


そのたびに膨らむ男の子のほっぺと
それを見つめている母親の表情を
時折、坂崎は振り返って交互に見ていた。