さちこのどんぐり

後ろから抱きしめられながら、
結衣は浩二を抱きしめてあげたいと思った。

「ねえ、私たち…このまま結婚しちゃったりするのかな?」

「え!いや…なんていうか…俺はそうなればいいなって思ってるよ」

うろたえながらだったが、そんな浩二の答えが嬉しかった結衣は


「私はずっと浩二のそばにいるよ。だから、ひとつだけ約束して」

「約束って…?」

「私はずっと浩二のそばにいる…。
その代り浩二は絶対、私より先に死なないで。
私が死んじゃった後は浩二を一人ぼっちにさせちゃうけど、
必ず私より1日でも長生きして、私の最後は優しく見送ってほしいの。
そして、そのときはちゃんと『愛してる』って言ってね。」

「なんだそれ?お前はアメリカ人か!」
照れくさそうに浩二は言った。




「じゃあ明日も、いつものところで待ち合わせしてから正樹のとこへ行こう」
お互いの家への別れ道で浩二は結衣にそう言った。

「うん。また明日ね」

そう言って手を振る結衣に浩二は背中を向けながら、
車道と歩道を遮るガードレールを
持っていた傘で

カン・カン・カン・カン・カン

と叩いて鳴らして帰って行った。

浩二が結衣に「好きだ」と告白した日から始まり、
それから、いつも別れ際に浩二がとっていた行動だった。