さちこのどんぐり

「にやー」

二人はまた、歩道橋で出会った白いノラネコを見つけた。

「かわいい」ネコを撫でながら、はしゃぐ結衣を浩二は後から見ていた。


そして、いつものおどけた雰囲気とは違う思いつめたような表情で

「結衣は…いなくなったりしないよな」と呟いた。

彼の母親のことや、正樹の話とかしていたからか、今日の浩二は少し変だ。
彼は「ひとの死」について、すごく敏感なところがある。

「何言ってんの!バカみたい!」

そう答える結衣を浩二が後ろから抱きしめた。

突然のことにドキドキしながら、
結衣は「病気」とか「死」とかのキーワードに対して時折見せる浩二の心の震えを感じ取っていた。

そんなとき、結衣には彼が転校してきたばかりの小学三年生の男の子みたいに見えるときがあった。