頭が真っ白になった。というのはまさにコレの事だろう。
上手く頭が回らない。思考回路が切断されたみたいにあたしは何も考えられなくなった。


「おい、山村?」


電話を片手に黙ったままのあたしに神崎は心配そうに覗き込んできた。
その声で我に戻ったあたしは電話越しの梓ちゃんに少し早口で話した。


『そうなんだ。てか、梓ちゃん白木の事・・・。全然わかんなかった!あ、もうあたしは大丈夫だから!もう、吹っ切れたから。それに・・・神崎、結構良い奴だし。』


最後の部分は隣を歩いている神崎に聞こえないくらいに小さく言った。もしかしたら梓ちゃんにも聞こえてないかもしれない。
でもこの言葉は本音じゃない。ただの強がりだ。


『・・・そっか。じゃあ、報告だけだったからまた明日ね。紗奈ちゃん、神崎くんと幸せにね?』


『うっ、うん。梓ちゃんも幸せにね?』


電話が切れ機会音だけを耳を刺激する。
・・・意味がわかんないよ。
梓ちゃんは神崎一筋じゃないの?さっき、教室にいた時だって何よりあたしに気を遣ってくれて「神崎よりあたしが大好き」なんて嬉しい事を言ってくれたのに何故?

あんなたった数十分の間で梓ちゃんは白木に心が揺れたの?
そんな事ってあの梓ちゃんに限ってありえるの?

わからない。
わからない。
もう何がなんだかわからないよ。

「山村!大丈夫か?」

またもや神崎の声で我に返った。
ねぇ、ヤバイよ神崎。
あたし意味がわからなくて泣いてしまいそう。
ねぇ、神崎。あたし神崎と付き合った方が良いのかな。


「山村何か変だって!今日はやめとくか?」


ただの強がりで言った“神崎・・・結構良い奴だし。”という言葉。

“結構良い奴”なんてもんじゃない。神崎は人が良すぎるよ。
もう、神崎で良いのかな。もう白木もどうでもいいし・・・。