神崎は、馬鹿だけど誰よりも人の気持ちをわかっていて、誰から好かれる人気者。
そんな人があたしの事を好きなんだ。



神崎とあの女の子はもう帰っただろうか。
一言も声が聞こえなくなり、気づけばあたしは座り込んで声をあげながら泣いていた。
もう誰に見られてもいい、今はありったけの涙を流したい。


だけど、どんなに泣きじゃくっても何かが変わる訳などない。
泣けばどうにかなる。そんな考えは全く通用しないのが現実だ。



そう思っているのに涙は止まらない。
頑張って抑えようとしても、溢れ出る涙。

あたし、こんなに泣くのは初めてだ。
恋って、こんなにも難しいものなんだ。



『山村、泣き止んだ?』


「・・・え?」



後ろから聞こえた声。
今度は白木ではなく、紛れもなく神崎だった。



「俺とさっきの女の会話聞いてただろ?俺、本気だからな!蓮は良い奴だけど俺も良い奴だろ?」


これは慰めてくれてるんだ。そうやって笑わかせてくれる。
神崎は慰め上手だな。


・・・-


「神崎、ありがとう。」


「え?全然良いって!元気だせよ、山村。」


家まで送ってくれた神崎にあたしはお礼を言った。
神崎は相変わらず笑顔で、あたしまで笑顔になってしまう。



「じゃあね、また明日。」


「おう、またな!」



神崎に手を振り玄関のドアを開け家に入ろうとした時。



「山村がまだ蓮の事を好きなのはわかるけど、俺も山村が大好きだから!俺が絶対山村を幸せにする!」