き み だ け


「小島さん」

話をしていると橘くんと松井くんが

やってきた。

「これ、傘。ありがとう」

「あー、全然。わざわざLINEも

ありがとう」

「なになに、噂本当なの?」

松井くんがニヤニヤして

間に入ってきた。

「噂って?」

「光と小島さんが2人で図書館で

勉強してたってやつ」

「あー、間違いではない」

クールな返事をする橘くん。

「光と小島さん、付き合ってんの?」

「え?違うよね、小島さん」

「え?うん、違うよ違う」

なぜあたしに聞くのか

よくわからなかった。

でも、からかったような笑い方に

少しきゅんとしてしまった。

「小島さん、今日も図書館行くの?」

「うん。明日からテストだし」

「俺もいこっかな」

「えー、俺もいっていい?」

「何で修二が来るんだよ」

「何、邪魔とかいうわけ?」

「そーゆーんじゃないけど

小島さんも迷惑だろ」

「あー、あたしは別にいいよ。

家に帰るから2人でどーぞ」

「いや、でも」

橘くんが止めてくれるけど、

あたしは別に橘くんと

一緒に勉強がしたいわけでもない。

確かにかっこいいけど

周りの女子みたいにキャーキャー

いったりはしないし、

図書館で勉強する方が

集中できるけど

橘くんと松井くんと3人で

勉強なんかして勘違いされる方が困る。

「じゃあ、中野さんも一緒に

図書館いこーよ。4人でさ!」

「え、私も?」

「知夏、やめとこ」

「小島さん、俺たちのこと苦手?」

少し悲しそうな顔であたしを

見てくる橘くん。

「そーじゃないけど」

「じゃあ4人で勉強しない?

ほら、3年間クラス同じなわけだし

ほら、数学も教えてほしいし」

陽平みたいな微笑み方で言われると

断れなくなってしまった。

「中野さんもいい?」

「私は全然!」

「じゃあ、決まり」

そーいって2人は席に戻っていった。