き み だ け




「…でもあたしも負けたくないよ」

「わかってるよ。でももう叶愛に

隠しておきたくないから

ちゃんと言って堂々としておこうと

思ったの。本当勝手でごめん」

あたしはただただ美華と目を

合わせられなくて首を横に振った。

「じゃあ私こっちだからまたね」

土砂降りの雨の中あたしは

身動きがとれないままぼーっと

立ち尽くしていた。

負けたくないとか言いながら

もう負けたような気がしていた。

ただ大粒の涙が溢れ出て

脚の力が抜けた。

びちゃびちゃの地面に向かって

1人泣き続けた。

「…もう無理だよ…陽平」

あたしが1人でこーやって

心の中で助けを求めている時

いつだってどこにいたって

1番に駆けつけてあたしの手を

とってくれた陽平は今はここには

いない。光弘を美華にとられてしまう

そんな怖さが襲ってきて

負けたくないって思っていても

あの2人の仲は邪魔できない気が

どうしてもしてしまう。

光弘を手放さないことは

できるんだろうか。