き み だ け




「ごめん叶愛。私嘘ついてたの。

陽平とは別れた。陽平がボストンへ

戻る前にちゃんと。」

…陽平嘘なんてついてなかったんだ。

何てこと言ってしまったんだろう。

"叶は美華子を信じるのか"

あの時冷静な判断をできていれば

きっと陽平を傷つけなかった。

「…どうして嘘なんかついたの?

美華、あたしと違って本気で陽平のこと

想ってるって言ったよね?」

「叶愛が憎かった」

美華は立ち止まりあたしの方を見た。

土砂降りの雨はだんだん強さを

増していくかのようだった。

「光も陽平も叶愛のことしか

みてなかった。私は形として陽平と

付き合っていることになってるだけで

心なんてどこにもなかった。

いつでも光のことを追いかけてた。

でも形としての付き合いも終わって

陽平が離れていって光もいなくて

私は1人になった。私だけ愛されて

辛いって悩む叶愛が憎かった。

じゃあ光を手放してよって思ってた。」

必死に歯を食いしばり

涙を流す美華をみて胸が痛くなった。

「でも光の幸せを考えたら

叶愛の中から陽平を消すことだって

思ったから陽平と別れてない

ってことにした。でももう最近

光と関わることが前より少し増えて

抑えられなくなったの。」

「…美華」

「付き合ってるのもわかってる。

光が好きなのは私じゃなくて叶愛だ

ってこともわかってる。

でもいつか叶愛は言ってくれたよね?

向き合うべきだって。

だから私ちゃんと光と向き合いたい。」

こんな強い一途な気持ちを

諦めろなんて言えるわけない。