き み だ け




「俺はもう別に何か言う気はないし

特に叶愛の恋愛相談とかも乗る気とか

ないけどさ、昨日のやつでも

陽くんでもどっちも選ばなくても

叶愛が毎日楽しくて後悔しない方を

選ぶべきだと思う。

叶愛は俺のたった1人の姉貴だから

ちゃんと幸せになってほしい。」

16年間生きてきて弟に初めて言われた。

小さい頃からあたしよりしっかりしてて

クールで何思ってるのか

全然わからなくてあたしのこと

嫌いなのかと思うけどいつでも

優しくて弟とは思えないほど

大人っぽくて、

いつでも助けてくれてた。

こんなにあたしのことを

考えてくれてたなんて思ってなかった。

「…ありがとう、航太。大好き」

あたしは目に涙を溜めながら

笑顔で航太に抱きついた。

「なんだよ、気持ちわりーなぁ。

離れろよ、何泣いてんだよ」

航太のこんな無邪気に笑ったところを

いつぶりに見たんだろう。

弟にこんなに背中押されたんだ。

あたしもいつまでもうじうじ

してられない。