「よかったねぇ、俺がボストンから
戻ってきてて」
「…うるさい」
「泣くなって約束したのに
なんで泣いてんの」
「だって仕方ないじゃん」
「本当に仕方ないこと?」
急に声が真剣になった。
「叶 こんなこと言ったらもっと
戸惑わせると思う。
でも俺は叶が好きだ。」
「…え?」
ずーっと聞きたかった言葉だった。
あたしは陽平からこの言葉を
言われるのをずーっと待っていた。
でもそれは今じゃない…
「…そんなのずるい。
もうあたしのことなんとも思ってない
って言ったのは陽平じゃん。」
「だからそれは美華子と光弘との
ことがあったから言うしかなかった。
俺はずっと後悔してた。
諦めたくても諦めきれなかった。
ちゃんと決まってから答えがほしい。」
…ずるい。
そんなのずるい。
「…美華のことはどうするの」
「ちゃんと明日会って話してくる」
…あたしはどうしたらいいの?
「じゃあまたな」
気づけばもう家の前。
軽く微笑んでそのまま
陽平は帰って行った。
