き み だ け




「…どうかした?」

橘君が微笑んでこっちを見る。

「え、あ、ごめん。何もない」

みていたのを気づかれた。

「あのさ、この問題解ける?」

「あ、うん。わかるよ」

橘君は陽平と違って数学が苦手。

あたしは中学の頃陽平に

たくさん教えてもらったおかげで

すごく数学が得意になった。

「おー、わかりやす。さんきゅ」

「いやいや全然」

「てかそろそろ腹減らね?」

言われてみるともう1時だった。

気づかないうちに

結構時間がたっていた。

「あー、そうだね」

「売店いくけどいく?」

図書館の奥にある売店に一緒に行った。

「小島さんてさ、数学得意なの?」

「まぁちょっとだけ」

「また教えてよ」

「あぁ全然いいよ」

微笑んだ顔が陽平に似ていて

今にも泣きそうになった。

後ろ姿も横顔も微笑んだ顔も

どこか陽平に似ているけど

話していると陽平じゃないんだな

って現実に戻って、

どーにもならないこの気持ちだけが

いつまでも残っていた。

高校になったら新しい恋を

したいって思っていたのに

こんなんじゃいつまでたっても

変われない。