『今日、叶に浴衣似合ってるって

言ってやったか?』

「…言ってない」

『あいつめったに浴衣なんて

着ないんだ。いつでも祭りの時

着たがるくせに自分に自信なくて

着てこなかった。そんなやつが

今日、着ていったんだぞ?

どういうことかわかるだろ?』

「…」

そんなの全然知らなかったし

確かに浴衣は似合ってたけど

陽平とのことが気になって

頭の中がいっぱいで

言えなかった。

『そんなことも言ってやれなくて

足の痛みにも気付いてやれなくて

よく俺に叶に関わるなって

言えたよな。』

「じゃあなんだよ。

彼氏にもなれねぇくせに

そういう思わせぶりな行動で

叶愛がつらい思いしてることくらい

わかるだろーが。とにかくもう

近づくな」

自分の情けなさにため息が出た。

叶愛のことをいつの間にこんなに

好きになっていたんだろう。

「…光弘くん」

俺は驚いて目を見開いた。

慌てて後ろを振り返ると

修二と知夏が立っていた。

「どうしてここに?」

「光弘くんが帰るって言ったから

私たちも帰ろうってなって

神社出てきたら鳥居のところに

光弘くんが見えたから

帰るなら一緒に帰ろうと思って

近づいたら“陽平”って名前が

聞こえたから…」

「光、お前どういうことだよ」

「叶愛には黙ってろ。

絶対に。」

ごめんな、叶愛。

まだもう少し話すことは

できないんだ。

―光弘Side end-