ブーブーブー
“着信 知夏”
「もしもし」
『大丈夫だった?今光弘くんと
合流できたところなんだけど』
「あぁ大丈夫。今帰ったところ」
『1人で帰れたの?』
「陽平が送ってくれたから」
『なんで陽平君が!?』
「足のこと気にしてきてくれたみたいで」
『あ、待って。光弘くんに代わる』
光弘くん…。
『叶愛、陽平に送ってもらったって
聞いたけど』
「あ、うん。ごめんね。
LINEしたんだけど」
『いや、無事に帰れたならいいよ。
じゃあまた』
なんだかすごく話し方が
ぎこちなかった。
やっぱりまだ陽平に頼るのかよって
思われてるのかな。
あたしはモヤモヤしたまま
家に入った。
「ただいま」
―光弘side-
「俺も帰るわ。修二と知夏は
もう少し祭り楽しんで」
「あ、うん。じゃあまた」
俺は自分の心がこんなにも
狭いとは思ってもいなかった。
プルルルルル
『もしもし』
「もしもしじゃねぇよ」
『もう俺に関わらないんじゃ
なかったっけ?』
「なんで叶愛のこと探しに来たわけ」
『携帯も家、足はけがしてる。
まさかと思ったら体が勝手に
動いてた。これじゃ理由にならない?』
「叶愛には関わるなって言ったよな?」
『じゃあ聞くけど、光弘は
あんな人ごみの中、叶を
見つけ出すことはできた?』
言い返せない。
確かに俺ははぐれた後
少し周りを見渡したけど
叶愛らしい人は見当たらなかったし
焚き木のところにいとけば
来るだろうと思って
LINEしておいただけで
そこまで足が痛んでいることも
知らなかった。
俺は悔しくてただただ
歯を食いしばった。
