「ごめん、戸惑わせたよね」

「ちょっとだけね」

「あ、ごめん手離す」

慌てて光弘くんはあたしの手を

離した。

『焚き木の所に集まってください

そろそろ花火を始めます』

この神社の花火は

打ち上げ花火じゃなくて

自分たちで花火をするパターン。

100本に10本だけ、

ハートの火花に見える花火が

混ざっていてそれをカップルで

すると幸せになれるっていう

言い伝えがある。

「あっ…」

人がたくさん押し寄せたせいで

光弘くんとはぐれた。

「どうしよう…」

花火の招集のせいでだんだん

人が増えているせいで

余計に光弘君がわからない。

「…痛っ」

話しながらずっと歩いていたせいで

足がもう限界だった。

あたしはとりあえず端によって

携帯をさがした。

「…あれ?」

そういえば浴衣を着る時に

机においてそのまま

忘れてきたんだ。

…どうしよう。

これじゃあ連絡もとれないし

足も痛くて歩けないし

あるのはお金と腕時計。

知夏たちも見失っちゃったし

焚き木のところまで

いけば会えるかもしれないけど

そんなに奥まで歩けないよ…。