「じゃあちょっとこっち来て」
陽平が肩を貸してくれて
端に寄った。
「ティッシュと絆創膏持ってる?」
「あ、うん」
「肩、持ってて」
しゃがんであたしの足を
手当てしてくれた。
「とりあえず傷のところは
ティッシュ挟んで絆創膏しといたし
鼻緒も裏側絆創膏で
軽く止めてある。
でも足首ひねったのは
どうにもできないし
歩きづらいのは
変わりないと思うから
早めに帰れよ」
「あ、陽平」
「ん?」
陽平のこの、ん?って言うときの
顔が好きだった。
「ありがと」
「おっちょこちょい。気をつけろよ」
久しぶりにみた。
陽平のこんな優しい顔。
あぁー。だめだ。
このままじゃまた元のあたしに
戻ってしまう。
「あ、叶愛」
「ごめん、みんな遅くなって」
「人すごかったもんね」
「じゃあいこっか」
修二くんと知夏は
あたしたちの前を歩いて
すごく楽しんでいた。
「今日修二、知夏に告るらしいよ」
「…え、あ、そーなの?」
「やっぱり…」
「え?」
「なんかあったよね、叶愛」
「何もないよ?全然」
「…じゃあどーしてそんな
悲しい顔してるの?」
「え?そんな顔してる?」
「4人で初めて図書館に行ったときと
同じ顔してるよ」
自分でもわかっていた。
上手く笑えてない。
「ごめん、本当は陽平に会ったの。」
「いつ?」
「行く途中でね、つまづいてこけた。
そしたらたまたま来ていた陽平が
応急処置してくれたの。
ただそれだけなの。」
「また、好きになった?」
「違うの。そーじゃないんだけど
久しぶりに優しくされたから…」
素直な気持ちを光弘くんに
話したら嫌われてしまうかな。
光弘くんももう呆れてるかな。
「叶愛」
光弘くんがあたしの手を握った。
「俺は叶愛が好きだ」
「…えっ」
「まだまだ忘れられてないところも
あると思うけど、俺はそんな悲しい顔に
させないし一緒にいて
たくさん笑っててほしいって思う。
返事はいつでもいいから
俺の気持ち、知っててほしい。」
光弘くんの真っ直ぐすぎる告白は
正直あたしにはありがたすぎた。
