「ちょっと陽平、どこいくの?」
「ちょっと急いで。あと5分なんだ」
そう言われてあたしは急ぎ気味で
階段を登った。
ガラガラガラ
「ふぅー、間に合った」
3階の真ん中辺りの誰もいない教室。
「どうしてここに?」
「俺、優勝したら渡したい物が
あったんだ。」
「なに?」
「優勝はできなかったけど、
これ、受け取ってください。」
そういって小さな箱を渡された。
「…うそ」
箱をあけると小さな指輪が入っていた。
「俺はもう絶対叶から離れない。
今までたくさん遠回りして
やっと本当の幸せをつかめたんだ。
これから先受験もあるし大学も
離れてしまうと思う。でも俺は
叶以外の人じゃダメなんだ。
絶対俺が幸せにするから、
いつかしっかりした大人になったら
俺と結婚してください。」
その言葉を見計らったかのように
窓の外に大きな花火が打ち上げられた。
「えっ!?」
「ちょっと遅かったか」
「どういうこと?」
「叶に返事もらってOKだったら
叶の小指にピンキーリングはめて
必ずいつか薬指に移すからって
言って決めた時に花火があがって
くれたらよかったんだけどな」
「花火は陽平が用意したの?」
「いや、違うよ。毎年2年になると
後夜祭があるじゃん?その時は
いつも8時半に花火が上がるって
先輩から聞いててさ。ここの教室が
1番綺麗に見えるって思ったから
ここにつれてきたんだ。」
陽平の優しい笑顔に
心から幸せを感じた。
