「知夏、どうして断らなかったの?」
「だからいったじゃない。
私、修二くんのこと狙ってるから」
「やめときなって」
「叶愛は慎重になりすぎ。
それにいい加減、陽平くんのこと
忘れるって決めたんでしょ?
こーゆー機会って大事だと思う」
それはわかっている。
でも自分の中で陽平のことを
考えなくなるってことが悲しかった。
キーンコーンカーンコーン
あっという間に放課後。
「小島さん、中野さんいこーよ。」
爽やかな2人が教室の入り口で
呼んでいる。周りからは
いいなーとか言われながら
あたしと知夏は教室をでた。
「…叶」
…この声は間違いない。
「…陽平」
階段を上から降りてきた陽平が
声をかけてきた。
「あ、知夏。ごめん、先に行ってて」
あたしはなぜか勝手に
体が動いてしまった。
久しぶりに声をかけられて
少し話したいと思った。
もし本当にこのままあたしの中から
きれいさっぱり陽平がなくなるなら。
「毎朝会ってるのに話さないから
何か久しぶりに感じるな」
「…そーだね。」
「あの2人のどっちか、叶の彼氏?」
「え?あー、違うよ。」
「あ、なんだ。違うのか」
「…陽平は彼女いるの?」
「え?あぁまぁ。」
照れた顔が辛かった。
もう陽平は切り替えて前に進んでる。
あたしだけだ…いつまでもこんな。
