勇くんの胸に手を当てて。

「勇くん…。私の知らない勇くんを、
みれて、ちょと得した気分。ふふふ。
あんまり話してくれなでしよ?」


「それで、コソコソ?」

「コソコソって、そんなつもりじゃ…。」「話して欲しいの?」「うん。」


子供の頃は、お婆ちゃんやおじいちゃん
に可愛がられて甘ったれだった。
ハヤテが生まれて、注目がそっちに…。

「だから、子供だろ?悪戯して
困らせて、ハヤテをいじめてまた叱られて。そしたら、婆ちゃんが、勇!
この子に名前つけてって白いフワフワの毛の子犬。
可愛がってって。そしたらきっと
ハヤテも可愛がってあげられるよって。
小さくて弱いものには、優しくしないとねって教えられたんだ。

それで、「もも」て名前つけて
散歩したり、遊んだり、
優しかった婆ちゃんも天国へ旅立ち。
それを追うように…ももが…。

泣いてばっかいた俺に…じいちゃんが
ぬいぐるみ、くれたんだ。
今度は、いなくならないぞ!
って。犬のぬいぐるみくれた。

捨てられなくてなぁー。


「うん…。ひっ、ひっ、あぁぁ〜ん
勇くん…。優しい勇くん…。好き…。」


俺の胸で泣きながらスリスリしてくる
彩。後ろ頭を撫でた。
上目遣いで潤んだ瞳を見せる。

「彩…。今は、お前が俺の子犬?」

「ばか…。うっ、ひっひっ。」

「俺達は、お互いに優しさを大事にしような。」抱きしめた。