しんと静まりかえった暗闇に桜花は浮かんでいた。


光が差さないその空間で見えるのは自分の体だけ。


「…………」


何かが聴こえた気がして、襲ってくる眠気を我慢して首を巡らす。


「…………か……」


耳を澄ますがはっきりと聴こえない。


「……お……う……」


あぁ、やっと聴こえた、と桜花は微かに笑った。

霞がかっていた思考が少しだけ晴れた。


自分を呼ぶ声だ。自分を呼ぶ愛しい人の声。


「……おう、かっ……」

だが愛しい人は泣いているようだった。