「僕のことか……」


桜花は悪い考えが頭を過り、沈んだ声をしていた。


「いえ! あの童は『待って』と言っておりました。
それにあの声音は嫌っているようなものではありませんでした!」


霞は桜花の沈んだ声から勘違いをしていると察し、ちゃんと説明してやる。


「でも、僕は鏡花ちゃんを騙してたんだ……」


桜花は罪悪感の残る声でそう言った。


「そんなの……!
そういえば桜花様はあの童に昔話をしていましたよね?」


「うん」


「ならあの童はきっとここに参ります」


霞は自信ありげにそう言った。それに桜花は顔を向ける。


「どうして?」


「きっとあの童は桜花様と話がしたい筈です。
だから、昔話を口実にやって来るかもしれませんよ」