黒い雲が月を覆い隠し、辺りは暗くなっていた。
そんな中、森の落ち葉をカサカサとならして来る白い蛇がいた。霞(かすみ)だ。
霞は桜の木をスルスルと登り、桜花が座る枝に辿り着くと人型をとった。
人ではあまりない白い髪に赤い瞳。
見た目は七歳程度の子供のようだ。
綺麗に切り揃えられた霞の白い髪は、夜闇にぼんやりと浮かんで見えた。
「どうだった?」
桜花は霞を振り返らずそう尋ねた。
「特に体に異常はありませんでした。
ですが……」
「鏡花ちゃんの夢を覗いてきたんでしょ?」
「はい……」
霞は人の夢をある程度覗くことができる。
夢を見ている相手の思いや気持ちが強いとハッキリ見える。
「あの童はとても悲しい夢を見ていました。
ですが、最後には桜花様の夢を見ていました」



