また、好きになんてならない。



「今日は、やけに素直だな柚葉。」

そう言って先輩は
私の頭をポンポンと叩く。

「いつもは先輩が意地悪だからですよ、
私はいつでも素直です」

「好きな子には意地悪したくなるっていうあれだよ。」

先輩がそんな屁理屈を言うから
口を尖らした。

「……小学生みたい。
そんな嘘ばっかり言ってたらあとあと後悔しますよ。」

「後悔って?」

「白雪さんに嫌われちゃうとか…」

私が不意に白雪さんの名前を口に出すと
先輩は何かを察したようにニヤっと笑う。

「お前、やっぱ美琴にヤキモチ妬いてんの?」

「ちっ、違います…!
今のは先輩を心配してあげただけで…っ!」

私は慌てて首をブンブンと横に振った。

そんな風に思われたくないし、
自分でも認めたくない。

でも先輩はなんだかにやけている。

「心配しなくても、
美琴との恋なんて始まらないよ」

「先のことなんだから分かりませんよそんなの」

「なら、柚葉が俺の気持ち独り占めしてよ」

「…どこから湧いてくるんですか、その口説き文句。」

私は呆れたようにそう言ったけど
内心すごく
その言葉にドキドキしていた。

先輩は私をからかうとき
すごく真剣な顔をするから

いつ本気なのか

って胸を騒がせる。

だから

私の胸がドキドキと音をたてるのは
それだけの理由で

好きとかじゃないはずなんだけど…

でも

できるものならそうしたい

って思うのは

それは、

私が先輩のこと……