また、好きになんてならない。



「あんな顔、しないくせに。」

ニコニコ愛想笑いをする
先輩を見てそう呟いた。

なんだか少しモヤモヤする。

入学式のことだって
私はずっと気にしていたけど
もしかしたら、違う子にも同じ事をしてるかもしれない。

そう思うと無性に先輩に怒りが湧いてきた。

葉月ちゃんはいつの間にか
先輩の近くに行ってしまっているし、
悪いけど先に教室に戻っておこう。

人混みを掻き分けて教室の方へ振り返る。

「え、ちょっと柚葉!!
戻っちゃうの?」

途端そんな私を見たのか
先輩の近くにいる葉月ちゃんが私に声をかけた。

「え、柚葉?」

「っ………!」

そんな葉月ちゃんの言葉に先輩が反応しない訳もなく

聞き覚えのあるで私はもっていない低い声で
私の名前を呼ぶ。

さて、この状況は本当にやばい。

周りの女の子が少しざわつきだした。

そりゃそうだよ。
クラスでは特に目立っているわけでも無い私の名前を
あの先輩が呼ぶんだもん。

「ちょうどよかったお前に用があったんだよ」

場の空気が読めないのか、
それとも私をいじめているのか
ニコニコしながら
「ちょっとごめんね」なんて言って
女の子を掻き分け、私に近づいてくる。