また、好きになんてならない。



「…さっきまで元気よかったのに固まってる。
そんなにショックだった?
でも安心して。
俺、お前みたいなの嫌いじゃないよ。」

フッと笑みを浮かべる先輩は、

私の知ってるおちゃらけた先輩じゃない。

余裕そうなのは変わらないけど、

冷たくて、くすんでて、強欲そうで

…どこか寂しげ。

「まぁ、そんなこと言ってるけど
昔は本当にお前のこと好きだったよ。
今じゃ気になるって程度にも入らないけど、

……オモチャとしてならすごい楽しそうかな。」

先輩は私をじっと見て
舌舐めずりをした。

まるで羊をみつけた空腹の狼みたい。

先輩の言っていることが
頭に入ってグルグルと回る。

全てが
単純で複雑だ。

「せ、先輩のオモチャになんて、
絶対なりませんからっ…」

さっきとは違う先輩に
少し怯えながら
私はそう言った。

「本当お前って理解能力ないね。」

そんな私に呆れた表情をみせながら
先輩は言う。

「オモチャはさ、誰かに遊んでもらうとか自分では決められないんだよ。
…それだけ分かってて。

じゃあね。」

不適切な笑顔をみせると
今度は先輩から私に離れていった。

私はその場に固まる。

先輩は、何を思ってそんなことを言ったのだろうか。

怒りよりも先に
そんなことが気になった。