「す、すきって言ったんだからもう離してください……っ!」
それに抵抗しようと
さっきよりも強い力で先輩を押すと
油断していたのかパッと
体が離れた。
……チャンスだ!
「さ、さようなら……っ!」
私は顔を伏せまま
距離をとって葉月ちゃんの声が聞こえる場所に歩き出す。
「…まって。」
「え、ちょ………っ !」
途端思い切り
手を持たれて引き寄せられた。
なんだと思って振り向けば
その場に「チュッ」とリップ音が鳴る。
「〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!」
思わず口を手で隠した。
な、なに今の?!?!
唇には変な感触がまだ残っていて
とても顔が熱い。
先輩は
満更もないようで、
私の顔を見て「ん?」と首を傾げた。
まさか。
まさか私、
今先輩と
キスしちゃったの…?!?!
「……っ。
さ、最低………っ!!」
最悪の思い出の日、
その日に戻ったみたい。
先輩の顔がぼやけるくらい
私の目には涙がいっぱいある。
今のは、
事故?
それとも………
「なんか、不満げだね。
言えたご褒美にやってあげたのに。
あんまり嬉しくなかった?
キスは上手い方ってよく言われるんだけど」
余裕そうに「あはは」っと笑う
先輩に 怒りを覚え始めた。
先輩はキスをなんとも思ってないの?!
初めてだったのに……
こんな簡単に奪われるなんて……!
「先輩、やっぱり私貴方のこと
大っ嫌いです!!
一生近づいてこないでくださいっ!」
突然のことでまだ
よく状況がつかめないなか
私はそう言い捨てる。
そんな私を見て先輩はハァとため息をついた。
「なんで、お前そんなに俺のこと嫌ってんの?」
「な、何でって……!!」
もしかして
自分が最低な男って自覚がないの?!
先輩の言葉をきいて
私は驚いた表情を浮かべる。

