「ねぇ」 「………」 「ねぇねぇ」 「………」 「ねぇねぇねぇ」 「うるさいな!何だよ………」 俺がそういうと、彼女は決まって苦しそうな顔をする。 「ねぇ………、桜が咲いてるよ」 「………それが何」 「桜って、悲しいなぁ」 「は?」 「切なくて、儚くて、でも綺麗で。あの桜は特に」 彼女が指さす木には、もう花びらなんかついていないのに。 彼女はなんともいえない表情で、この教室から毎日毎日あの桜を見てた。