「………」

何も言わず、廊下に出ようと歩き出す。
俺の後ろの幻が、俺を見てるのが分かる。

教室から出る、瞬間。




「ーーーーーーーーーー。」



振り向いても、もういないのにすがりつきたくなった。
必死に貯めていた涙も、ボロボロと零れ出す。

「俺もだよ」

最後に送る言葉はこれで良い。
そう思って俺は家へと駆け出した。




「ばいばい。大好きだよ」

ーーーそんな声が風とともに聞こえた放課後だった。


いつか俺は、大人になって、恋をして、結婚するかもしれない。
どうなろうと知らない。けど俺が子供のうちは彼女の事は忘れないだろう。


だって彼女の名前は、

あの教室からいつでも見ることが出来るのだから。