「お前………馬鹿だろ。何で俺なんかに会いに来たんだよ」
「心配だったんだ。でもね、そろそろ帰らなくちゃならない。だから………君も進んで。私に、すがりついちゃ駄目なんだ」
「そこは覚えていて!とか女の子らしく言う場所だろーが」
「やだなぁ。そんなの私に似合わないよ」
あはは、と彼女は綺麗に笑った。
だから俺も、最後にしようと思ったんだろうか。
「お前は幻じゃない」
「うん。そうだね」
諦める前に、言いたいことを言おうと思ったんだろうか。
「いくなよ………」
「ごめんね」
必死に振り絞った言葉でさえ、彼女は軽くかわす。
あぁ、もう負けだ。
いつになってもお前には負けるんだ。

